医師免許を取得し、初期研修を修了したドクターの皆さんは次に専門医を目指すのが一般的かと思う。専門医は取得するのに長い年月や労力がかかる一方で、医師として生きていく上で必ずしも必要とは言えない。この記事では専門医を取得するべきかを考えている方のために参考になるだろう。
私は専門医を持たずにバイトを沢山経験してきた。その一方でクリニックの管理経験もあり、ドクターを雇ったこともある。そんな私が専門医をとるべきか?という疑問に対する答えを提示しようと思う。
結論から言うと専門医をとるべきかどうかは将来、目指している働き方によってかわってくるということになる。
専門医はあるに越したことはないが、取得することによるデメリットも存在する
メリット・デメリットを考えた上でも取る必要があると判断した場合にとる選択をされるとよいだろう。
専門医取得によるメリット
専門医を取ることのメリットを一言で表すと、初見の相手に最低限度の医療技術を示すことができるという点である。医師を雇う立場から考えると、全く初見のドクターの医療技術は全く測ることができないため、実際に働いてもらわないとわからない、ということになる。そこに「専門医」という称号があると、最低限度の修行を積んできた証になり、ある程度信頼がおけることになる。
つまり常勤・非常勤問わず、就職に有利ということである。
最近では「専門医以上」というアルバイト案件も時々見かけるようになってきている。専門医を持っていないと算定できない保険点数があるわけではなく、専門医であることに金銭的メリットがあるわけではない。しかし働く医療機関への信用を示すことができるという点でプラスに働く。
おそらくこれが唯一にして最大のメリットなのではないだろうか。
専門医取得によるデメリット
一方で患者目線ではドクターが専門医を持っているかどうかを気にしている人はほとんどいない。
また専門医が無いとできないような治療や、取れない保険点数があるわけではないため、医療行為をする上での金銭的なメリットはほとんどない。そのため、大変な思いをして専門医を取っても大して給料が上がるわけでもなく、取る意味があるのか?と疑問に思うこともあるだろう。
専門医を取ることのデメリットは、
1.永久的な資格ではなく更新の手間がかかる
2.取得するために膨大な時間とお金がかかる
ということである。
永久的な資格ではなく更新の手間がかかる
専門医は医師免許と違い、一度取得すると一生消えないという資格ではない。
約5年に1度更新しなくてはならない。そのため、維持にある程度の時間とコストがかかる。更新がめんどくさいので専門医を持っているけど更新しないという開業医の先生もいるぐらいだ。専門医を持っていることのメリットが少ないドクターにとってはここは大きなハードルである。
最近のトピックとしては、麻酔科学会が週3で同一施設に勤務していないと麻酔科専門医を更新できないという規則を作った。これは主にフリーランス麻酔科医を目の敵とし、学会として認めないという方針だと考えられる。
各科によって専門医更新のハードルは様々であるが、どの科もある程度の負担になることは変わりないだろう。
取得するために膨大な時間とお金がかかる
専門医を取るためには膨大な時間とお金がかかる。専門医を取るためには現在は医局に属さなくてはいけないことがほとんどだと思う。医局をやめて後悔した人はいないという記事でも書いたが、今の医局はあまりに多くの時間とお金を搾取している。
専門医を取るために、専門家以外の雑用に多くの時間を割き、またあり得ないほどの低賃金でこき使われる。多くの時間とお金を犠牲にするのだ。
修行のためだから仕方ないと割り切れるならいいと思う。しかし専門医をとるためにそこまで多くのものを犠牲にする必要があるのかを考える必要はあるだろう。
上記、メリット・デメリットを総合して考えると、単に医療行為をすることだけを考えると、専門医取得はあまりコスパの良いものとは考えにくい。フリーランスとしてバイトオンリーで生活することを考えている場合は、多くの医師採用担当者と関わる機会が多いので、取得しておいた方が良いだろう。
専門医をとるべきかとらないかは自分の将来の働き方を考えて選択しよう。必ずしも全員が必要なものではない。専門医取得のためにかかる時間とお金は膨大なので、取る必要があるのか今一度考えるべきである。